竹口の日記

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【エッセイ】エロ漫画と思い出と伝説と友情の話

 

§1 エロ漫画と思い出の話

ある日の晩、私はインターネットでひとつのエロ漫画のサンプルを読んだ。

 

 内容はトレンチコートをきたダンディな露出狂の旅人が、小学生くらいの少女に裸体を見せつけ、そこから性行為を始めるというものだ。

 

 とても紳士的かつ流れるように性行為が始まるので、非常に衝撃を受けた覚えがある。なぜ私がこのようなエロ漫画と出会ったのか。

 

おそらく私は「露出狂の少女」というジャンルの作品を探していたのだと思う。私は日毎に性欲の矛先が変わるタイプで、その日がそういうジャンルの日だっただけだ。

 

そして、「小学生 露出狂 漫画」などと検索したのだろう。

 

私は「露出狂の少女」というジャンルを求めていたが、「露出狂の男と少女」というただの性犯罪でしかないような無骨な作品も多くヒットした。

 

基本的にそういうものを見つけたら、「ハズレを引いた」と思ってすぐにブラウザバックするのだが、私は例のダンディな露出狂の男が出てくるエロ漫画に釘付けになった。

 

なぜなら、その男は通りすがりの少女に自らの裸体を見せつけた後、洗練された身のこなしでごく自然にその少女を抱き、性行為を始めたからである。

 

その男は、若いというわけではなかったが、一切の不潔感がない紳士で、私は「これがダンディということか」と感服した。

 

言語化するならば彼の行動は紛れもなく露出狂のレイプなのだが、そこにはクラシックバレエのような言語化できない美があり、私は大きな衝撃を受けた。

 

また、その男は旅人であった。作中にはこのようなセリフがあった。

 

やっと見つけたよ、かわいいお嬢ちゃん

おじさん、誰?

ウィンター、旅人さ

どんな意味?

 

 

 

なんだ、この間抜けなセリフは、と1人でウケるの同時に、彼が完全に言語を超越している、百戦錬磨の男であることを感じた。

 

§2 エロ漫画と思い出と伝説の話

例のエロ漫画に出会った翌日。私はこの衝撃を友人に伝えなければならないと思った。

 

ストーリーの芸術性と言語を超越した2人のやりとり。それは洗練された美であると同時に、一歩引いて見ればツッコミどころの多いエロ漫画だった。

 

つまり、話のネタとしてはもってこいだったのである。私はこのエロ漫画のセリフを友人に再現してみせるために、こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと見つけたよ、かわいいおじいちゃん

 

 

 

 

 

 

それを聞いた友人は吹き出した。

 

まずい。盛大に言い間違えた。「お嬢ちゃん」と言うべきだったのに「おじいちゃん」と言ってしまった。

 

かわいいおじいちゃんってなんだ。天皇陛下のことか?

 

ここで完全に論点がすり替わってしまった。話題の中心は「かわいいおじいちゃん」に取って代わられた。エロ漫画の内容を最後まで伝えることはできなかった。

 

そして、「かわいいおじいちゃん」というフレーズはそのとき一緒にいた友人以外にも広まって、爆発的に流行した。

 

その流行と人気は凄まじいもので、「かわいいおじいちゃん」という言い間違えが発生したときに通っていた道は、「かわいいおじいちゃんロード」と名付けられた。

 

かくして「かわいいおじいちゃんロード」は観光地になり、「かわいいおじいちゃん」は伝説になった。

 

§3 エロ漫画と思い出と伝説と友情の話

「かわいいおじいちゃん」というフレーズだけが独り歩きして伝説を作ってしまったために、私が本当に伝えたかった例のエロ漫画の衝撃は、伝説の仄暗い影に隠れてしまった。

 

だが、エロ漫画の衝撃を誰にも伝えることができなくとも、「かわいいおじいちゃん」というフレーズだけが残れば私はそれで良いのかもしれない。

 

なんといっても、かわいいおじいちゃんには私たちの友情が、かわいいおじいちゃんロードには私たちの青春が染み込んでいるのだ。 

 

今日はどこから帰る?

かわいいおじいちゃんロードで

このような会話を何回しただろうか。

 

あの日から卒業まで、私たちは毎日のようにかわいいおじいちゃんロードを通った。

 

卒業式の当日は他校に乗り込んだのでかわいいおじいちゃんロードを通ることはなかったが、かわいいおじいちゃんロードは私たちの学園生活そのものだった。

 

卒業してからも私はかわいいおじいちゃんロードを歩いている。しかし、かわいいおじいちゃんロードを歩く私の隣にいるのは、別の友人に変わってしまった。

 

ところで今、私の横を歩いているこいつは、ここがかわいいおじいちゃんロードだということを知っているのだろうか。気になってそれとなく聞いてみたところ、知っていたらしい。

 

やはりかわいいおじいちゃんロードは伝説だった。

 

エピローグ

かわいいおじいちゃんロードが私たちにとってどれだけ大切なものなのか、分かっていただけただろうか。

 

あのエロ漫画が無ければ、かわいいおじいちゃんロードはただの道だった。

 

しかし、あのエロ漫画を目にしたのはあの1回だけだった。すでに出会いの日の翌日には行方不明になっていた。日常と帰り道を青春に昇華させてくれたあのエロ漫画に、もう一度会いたい。

 

自力で探そうと試みたことは何度もある。

 

だが、ブラウザの履歴は消していたし、検索エンジンにも一切ヒットしないので、どれだけ探しても見つからなかった。

 

例のエロ漫画は1日足らずで忽然と姿を消し、その後何年も、私の前に現れていない。

 

私の見たエロ漫画はどこに行ってしまったのか。それとも、これは旅人の見せた幻想だったとでもいうのだろうか。

                                (完)

終わりに〜捜索にご協力お願いいたします〜

感傷的なエッセイを書いてしまいましたが、私はただエロ漫画を探したいだけの人です。どうかエロ漫画捜索にご協力お願いいたします。

 

この話を聞いてなにか心当たりありましたら、こちらのフォームからお知らせください。どれだけ些細な情報でも構いません。

 

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